8月某日(2015/8/16 PM5:00)、何も知らぬ哀れな子羊達が集う。





一斉に注がれる視線






ま さ か






不当なる魔女裁判
理性を失った人類





もうこの場所に

味方など

いない。




















何もかもを見通す事が出来た。

善も、悪も。


それが故に、疎まれる。
ただ目に見える真実のみが、盾だった。
矛だった。





しかし





「ぼー占い師なんだけど――――」






馬 鹿 な !!




この世にその命を受けた者は唯1人!!
そう、この




!!!



真実の目を持つ者に対抗するなど、自らの正体を曝している事に等しい。


墓穴を掘ったな!!!


覚えずに笑みが零れる。我々の勝ちだ。

思い知らせてやろう!
誰を敵に回したのかを!!
何が真実であるかをっ!!

この、揺るがされる事のない完全なる証拠をもって!!




やった。

やってやった。

これで人類は救われる。
安寧な日々を、再び享受する事が出来る。






だ が


もう既に



人類は狂気に侵され始めていた。













「こなもんかなぁ。」

おい、

「じゃあ、こなもん。」

待て、

「こなもんで。」

待て、待て、待て!待て!!













散り行き際、
痛覚も、
視覚も、
聴覚も。

何も無い筈の空間で、頭の端に思うのは、
ただ、











ぼーさん、自分の役職(この時は霊媒師)ぐらい、ちゃんと把握しといて下さいっ!!!















生まれ変わった世界では、何の因果か、前世でこの身をまんまと陥れた元凶になり替わっていた。


何の根拠も無いままに、誰か1人が犠牲となる、悪しき風習。
正に、





















毎夜開かれる密やかな会合において、彼等には言葉など通じない。
そこにあるのは



生 キ タ イ



ただ、それだけだった。












勇敢なる騎士となって、正義を守った事もあった。
成す術もなく、ただひたすらに立ち尽くすだけの、矮小な存在だった事もあった。


しかし、一度も、
ただの一度も、悪魔にこの身を支配される事だけは決してなかった。





だが、駄目だ。
何を言おうと、私の声は届かない。
どの世でも、真っ先に消されるのは自分だった。





人間の分際で、厄介な力を得た所為か、
それともただの見せしめか。














誰かが言った。

この世では、











正直者が馬鹿を見るのだ












と。















それでも繰り返した。

何度も

何度も

何度も





最後の転生。
輪廻の終わり。



もう、疲れていた。何も出来ない自分に。






正義が、
悪となる世界に。







「お前だろう。」


もう、聞き飽きた。



違う。
私は人間だ。


でも


もう力尽きた。
認めてしまおう。

真実は、受け入れられない。



















生きている。


何故?

分からない。
あぁ、神よ。ここへ来て、どうして私を生き長らえさせる?

疲れた

と、命を諦めた事への罰か?



1人、また1人と減っていく。



だが


まだ生きている!!


この私に言っているのか?


「「「真実を見極めろ!!!」」」





無理だ!出来る筈が無い!!

もし人外があと2人紛れ込んでいたら…?

今まで何も成す事の出来なかったただの人間だぞ!!

騎士がいると仮定すれば――――

止めろ!勝てっこない。

占い師が殺されたぞ!どちらかが化け物だ。
分からない!!
占いの結果を鵜呑みにするのか?
だって名乗り出たのが1人だったじゃないか!
既に消されていた可能性は?

考えろ 考えろ

考  え  ろ  !!!










「白か、黒か。」











あとは、貴方次第だ。











朝が来た。
空は漆黒から澄み渡る青へと変わり、窓の外では爽やかな風が通って行く。









生きて、いる………?




勝った、のか?

人間が?奴らに?

やった!この世界を守り抜いたぞ!


過去の敗北は、勝利の礎となったのだ!!!!










ただ、
願わくは





「1回ぐらい、人狼なりたかったなぁ…。(2015/8/17 AM7:00)」